謎だらけのエリザベス・ラムさん事件とロサンゼルス・ダウンタウン「セシルホテル」の黒い歴史

セシルホテル

この数年、急激な再開発が進み、流行のクラブやレストラン、ホテルに代表されるロサンゼルスのおしゃれスポットは、ハリウッドやビバリーヒルズから、徐々にダウンタウンに移りつつある。そのロサンゼルス・ダウンタウンの中心部にある老舗の二つ星ホテル「セシルホテル」(THE CECIL HOTEL)は、数年前にリモデルされ、現在は世界各国からの観光客にも人気なホテルのひとつだ。

その「セシルホテル」の宿泊客たちが毎日の様に、飲料水として飲んだり、歯を磨いたり、シャワーを浴びたりするために利用している水は、ホテルの屋上に設置された給水塔から流れてくるのだが、昨日2012年2月20日水曜日、その給水塔からカナダ人女性旅行客の遺体が発見された。貯水タンクに浮かんだその遺体は、死後3週間が経過し、腐乱し切っていたという。

ロサンゼルス市警は、発見された遺体を、2月1日から行方不明になっていたブリティッシュコロンビア大学(カナダ・バンクーバー)の学生、エリザベス・ラム(21歳)(Elisa Lam / エリサ・ラム)のものと断定した。しかし、ラムがどのようにして、警報装置付きの施錠されたドアを開けて屋上に出ることができたのか、そしてなぜ密閉された貯水タンクの中で死に至ったのか、死因は特定できないままにいる。

Elisa Lam

ラムの遺体が浮いていた貯水タンクは、宿泊客が利用する各部屋のシャワー用の水のほか、ホテル一階にあるカフェや階下のキッチンにまで利用されていたため、現在、ロサンゼルス郡公衆衛生局が、ホテル利用者と従業員の人体への影響を懸念して、その汚染度を調査中という。

同ホテルに8日間宿泊していたイギリス人観光客のサブリナ・ボーさん(Sabrina Baugh)は、CNNの取材に 「妙な味がするとは思ったのよ」と答えている。夫のマイケルさんは、「事件を知ったときは本当に胃が気持ち悪くなったよ。水を飲んじゃったから精神的にも最悪な気分さ。」と、驚くべき事実に夫婦ともども辟易といった様子だ。

ところで、この「セシルホテル」は、当社ビルからほんの3ブロックの位置にあり、毎日のようにその前を通るのですが、実はこのホテルはいわくつきで、知るヒトぞ知る心霊スポットなんです。そして、このセシルホテルには、そう呼ばれるに十分過ぎるほどの陰惨な黒い歴史がある。リモデル後のファッションブティックホテルの雰囲気からはほど遠い、血塗られた暗い過去を今日に至るまで引き摺っている。

TheCecilHotel_Inside

ロサンゼルス市警の記録によると、1920年に建てられたこのホテルでは、20年代、30年代に人が死ぬ事件が多発し、60年代には女性が飛び降り自さつをしている。80年代には「ナイトストーカー」「峡谷の侵入者」の異名で知られる連続キラーリチャード・ラミレズ(Richard Leyva Ramirez)(下写真右)が、宿泊代がまだ14ドルだった当時、14階の部屋に滞在し、その後、14人をあやめた(有罪判決は13人)。現在はカリフォルニア死刑囚監房に投獄されている。さらに、「ウィーンの絞さつ魔」「ジャック・ザ・ライター」「刑務所の詩人」として知られたオーストリアのキラージャック・アンターウェガー(Jack Unterweger)(下写真左)は、ウィーンとプラハで複数の売春婦をさつ害したのち、ロサンゼルスの同ホテルに滞在中に、部屋に連れ込んだ近所の売春婦3人をさつ害。アンターウェガーは複数の国で計11人をさつ害後、マイアミで逮捕されたが、1994年にオーストリアのグラズカラウ刑務所で首吊り自さつしている。その後も「セシルホテル」は、現在にいたるまで複数の犯罪が報告されているが、その多くが残忍であり、奇怪なものばかり。

cecilmurders

そして、上述のような歴史的な問題点だけではなく、「セシルホテル」には立地的な問題点も挙げられる。このホテルが位置するのは、ロサンゼルス・ダウンタウンの「スキッドロウ」と呼ばれるエリアの外れ。「スキッドロウ」とは、ダウンタウンの中心部にある地区名で、路上生活者や薬物中毒者が多く、貧困層やマフィアによるサツ人・強盗・強○・薬物売買などの犯罪多発地区だ。一般的に「スキッドロウ」は、日本語で「ドヤ街」などと訳されるが、東京・山谷のドヤ街などとは比較にならないほど荒んでいて、日本国内で類似するエリアを探すのはまず不可能だろう。映画に出てくるような世紀末のゴーストタウンや廃墟を思い浮かべていただければ分かりやすいだろうか。8,000人から10,000人とも言われるホームレスが、行く当てもなくこのスキッドロウ地区に集まっている。

リトルトーキョーとは道路一本はさんで隣り合わせになっている「スキッドロウ」地区だが、冬の寒い夜にはホームレスの凍死もあいつぐほか、悪質な犯罪や事件があとを絶えない。つい先日も、泥酔状態で運転していた20代の女性が複数のホームレスを轢きころしてしまったり、ある学生が寝ているホームレスに故意にオイルをかけ、火を付けて逃走するなどの事件があった。また2005年から2009年にかけて、ロサンゼルス市内の病院で引き取り手のいない全身麻痺患者や末期患者たちを、病院の職員らが真夜中に担架で運んでは、スキッドロウの路上に放置していくという事件が多発し、アメリカが抱える医療制度問題の深刻さを浮き彫りにする大問題になったこともあった。その数は50件にも昇り、中には全身麻痺患者を担架に拘束したまま放置するケースも見られた。同様に、医療とは無縁と言える極めて不衛生なこのエリアから、ある疫病が発生し、スキッドロウを中心にダウンタウンの一角が数日間に渡って封鎖される事件もあった。そして、広大なロサンゼルスの中にあって高層ビルが密集するこの地域は、飛び降り自さつ者も多いことで知られる。

skidrow

この数年、アメリカ屈指の富豪たちが莫大な資金の投資を重ね、新たに再開発が進められているロサンゼルス・ダウンタウン地区ではあるが、リモデルされたロフトやアパート、ホテルの間には、窓ガラスが割れたままの錆びだらけなビルが立ち並び、夜にもなると歩道の隅には肥えたネズミが這い回る。映画やテレビドラマの世界では煌びやかに見えるロサンゼルスの中心にありながら、「スキッドロウ」とはある種、呪われた場所とも言えるだろう。

そんなダウンタウンの中心地スキッドロウにあるのが「セシルホテル」なのだ。このホテルに32年間住んでいる89歳のバーナード・ディアズさんは、ロサンゼルスタイムズ紙の取材に対し、ラムが行方不明になった夜に、「上の階から聞いたこともないような激しい物音が聞こえた」という。また、その夜、三階と四階の間で配水管に何らかの障害があり、ホテルの水が氾濫してフロアが洪水状態になったとも話した。

警察によると、ラムのロサンゼルスでの滞在目的は不明だが、旅行中は、行方不明になる直前まで友人や家族と連絡を取っており、最終目的地がカリフォルニア州中部サンタクルーズだったことは判明している。また、ホテルの従業員によると、彼女が誰かといるところは一度も目撃されておらず、始終単独行動だったという。しかし、セシルホテルのエレベーターに設置された防犯カメラに映るラムの様子を見ると、本当に彼女が「ひとり」なのだろうかと思わせる奇妙で偏執的とも取れる姿が数分間に渡って記録されている。

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下記は行方不明になる直前と思われるラムの姿を映した防犯カメラの映像だが、読者のみなさんは、ラムのこの奇行、どう感じられるだろう?「セシルホテル」の歴史となんらかの因果関係を疑ってしまうのは不自然なことだろうか?

ラムは、この数時間後、帰らぬひととなってしまったのだ。いま、筆者であるわたしは、事件現場からほんの数ブロックのビルのデスクで、窓越しに真っ暗なダウンタウンの廃墟ビルを見ながらこの記事を書いているが、なんとも背筋の凍る思いである。犠牲になったラムさんには、心からご冥福をお祈りしたい。

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